【書評】新しいゲノムの教科書 DNAから探る最新・生命科学入門

【書評】新しいゲノムの教科書 DNAから探る最新・生命科学入門

Amazon Omicsのために読みました。「完全に理解した」と言いたいところですが、本当の意味で「なにもわからない」
Clock Icon2023.03.21

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Amazon Omics を利用するにあたり必要になるのはAWS 知識と生物の知識です。「最後に生物を勉強したのはいつの事やら」と思い学び直すために読んだ本の紹介です。

新しいゲノムの教科書 DNAから探る最新・生命科学入門

Amazon Omics の基本的な機能の動作検証する上での前提知識として読んでおくと役に立つ箇所を中心にまとめます。

最初に

新しいゲノムの教科書の対象読者は以下の様に説明されています。

そこで本書は、なるべく少ない予備知識(中高生程度の原子、分子の基礎知識など)をもった読書を対象に、今日のDNAに基づく生命科学の大枠を、そこに書き込まれた生命情報という観点から、できるだけ順を追って説明したい。

P3 はしがきより

はしがきに書いてあるとおり中高生程度の原子、分子の基礎知識があれば読めるならと思い読み終えた感想は「ここまで高度な教育を受けたっけか...受けてないないのか、単に何も覚えていないのか」という軽い挫折です。

同僚から勧められて読みはじめたので同僚にも感想を聞いてみたところ、みんな「難しい..」と言っていたため、心折れかけ・心折れる IT エンジニアは少なくはないことでしょう。

新しいゲノムの教科書の概要

2023年1月に発刊された新書です。本の内容については出版社のコメントを引用します。

DNAという言葉は誰でも知っているし、日常会話のなかでもよく口にする言葉です。しかし、DNAが生命の設計図であることはなんとなくわかっていても、それが具体的にどんな形で私たちの体の構造の「情報」になっているのか、想像するのは簡単ではありません。また、ニュースで毎日のように取り上げられる、PCR検査やゲノム編集、遺伝子組換え、クローンといった話題が、DNAとどう結びついているのかを正確に理解している人も少ないでしょう。 本書では、中学や高校で習う原子や分子といった知識があれば理解可能なように、DNAに基づく生命科学の大枠を、DNAに書かれた生命情報という観点から解説を試みました。少ない予備知識の読者でも最初から順を追って読めば基本を理解でき、少し知識がある読者なら、基本を確認しながら最新の解析技術まで深めることができる1冊。

出版社のサイトにコラムがありました。本の内容を少し知ることができます。

私は生物の専門家ではなく、ただの IT エンジニアです。Amazon Omics の基本的な機能をひととおり触ってみた経験を元に、Amazon Omics を触る上で抑えておきたい知識が書かれた章を紹介します。

目次は以下です。一般的な IT エンジニアには聞き馴染みのないキーワードが多いのではないでしょうか。セントラルドグマと言われれば、真っ先にエヴァの話かな?と反応してしまいます。

  • 第1章 生命の情報~なぜDNAという分子が重要なのか
    • 1生命の単位としての細胞
    • 2原核細胞と真核細胞
    • 3細胞の多様性と分化
    • 4クローン生物とはなにか
    • 5ES細胞、iPS細胞と再生医療
    • 6すべての細胞に同じ「ゲノム情報」
    • 7DNAの構造
  • 第2章 遺伝子とはなにか
    • 1遺伝子という概念の変遷
    • 2RNAとセントラル・ドグマ
    • 3転写――RNA合成
    • 4mRNAを成熟させるRNAプロセシング
    • 5タンパク質の基本構造
    • 6タンパク質の多様性
    • 7翻訳―ータンパク質の生合成
    • 8翻訳後のタンパク質の成熟
    • 9非コードRNA遺伝子
    • 10 DNAの複製
  • 第3章 ゲノムDNAの全体像
    • 1ヒトゲノム計画
    • 2いろいろな生物のゲノム
    • 3すべての生命に必要な代謝システム
    • 4ヒトゲノムDNA の中身をのぞいてみると
    • 5 トランスポゾン とはなにか
    • 6 ウイルスとゲノム
    • 7 遺伝情報システムとしてのゲノム
    • 8ゲノムの不安定化とDNA修復
    • 9ヒトゲノムの個人差と多様性
  • 第4章 クロマチンとエピゲノム~ゲノムに追記される情報
    • 1DNAのヌクレオソームとクロマチン構造
    • 2細胞記憶を担うエピジェネティクス
    • 3エピゲノムの片腕――DNAメチル化
    • 4もう一方の片腕――ヒストンコード
    • 5遺伝子のスイッチ
    • 6転写を増やす働きをするエンハンサー
    • 7エンハンサーの謎
    • 8インスレーター の二つの構造
    • 9核構造と相分離
  • 第5章 生命科学を大きく発展させるDNA解析技術
    • 1 DNAを扱う基本操作
    • 2遺伝子のクローニング
    • 3すっかりおなじみになったPCR
    • 4DNA塩基配列決定法の基本
    • 5「次世代」のDNA塩基配列決定法
    • 6遺伝子の発現解析法
    • 7クロマチン構造の解析法
    • 8DNA解析に変革をもたらすゲノム編集技術
    • 9新次元のゲノム情報をもたらすメタゲノム解析

Amazon Omics のために抑えておきたい知識

ここは抑えておきたいという章をピックアップしました。こちらの本は順序立てて説明されているため前の章の知識がないとわからなくなるかもしれません。ですので、読んでみてわからなければ前の章を確認していかれると良いと思います。

補足として生物なんもわからんの私でもわかりやすい説明してくれているリンクを載せています。

1-7 DNAの構造

散々登場する DNA について説明されています。アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)のお話です。

第2章 遺伝子とはなにか

2章はすべて抑えておいた方が良いです。この章では IT エンジニアとっては馴染み深いデジタル的な要素を生物に感じることができました。生物は結構いい加減なシステム(ロバストと呼ばれている)構成なんだと興味深かかったです。

エヴァではなく分子生物学におけるセントラルドグマは DNA が RNA に転写され、RNA がタンパク質に翻訳されるという概念の説明があります。また、DNA -> RNA -> タンパク質の流れにも例外(逆転写)があることにも触れられています。

3-2 いろんな生物のゲノム

いろんな生物の塩基配列の長さや、必要最低限の遺伝子とはなにか説明されています。

3-7 遺伝情報システムとしてのゲノム 〜 3-9

タンパク質遺伝子がコードされていて、そのコードにはどういった機能があるのか。DNA の修復ミスやコピーミスでの変異。SNP(スニップ)やインデルの話がまとまっています。

Amazon Omics の観点では Omics Analytics で扱うデータについて学べます。

第5章 生命科学を大きく発展させるDNA解析技術

DNA や RNA に関する各種実験法の原理の説明がされている章です。コロナの PCR 検査でおなじみ PCR は DNA の特定領域を大量に増やす方法だったり、ゲノム編集技術(CRISPR-Cas9)などのニュースで見聞きする言葉が紹介されています。

Amazon Omics の観点ですと Omics Storage に保存するシーケンサーから出力されるシーケンスデータ。そのシーケンスデータの塩基配列決定法や、Omics Workflows で実行することになるトランスクリプトーム解析(RNA-Seq)の概要を学ぶことができます。

おわりに

久々に生物の勉強をしました。ただの IT エンジニアなので理解には程遠いところにいます。

2023年1月に発刊された新書であり、新しいゲノムの教科書と銘打つだけあって、最新情報が幅広く小冊子に凝縮されていたのではないかと思います。わからない、知らない言葉が多く難しかったですが、最新情報のキャッチアップには効果的だったように感じます。というのもそう思えたのは読み終えた直後ではなく、次の本を読みはじめてからのことでした。

筆者の言葉ではしがきに以下のメッセージがあります。

この本を通読して、内容の大枠がわかれば、後はネットなどを使って興味をもった話題を自分でより深く掘り下げていけるようになることを期待している。

まだまだ学習が足りないなと思い私は次の本を読みはじめ「新しいゲノムの教科書」はとっかりとしては非常に良かったです、初学者には難しいものもありましたが。今読んでいる本の内容が読みすすめやすく助かっています。

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